クラウトロックとそれにまつわる音楽のブログ

クラウトロック/ジャーマンプログレの紹介がメインです。

【DANCE・MIDDLE EAST・MEDITATION】between/Contemplation

 

掲題ですが、

DANCEとMEDITATIONなんて全く真逆にあるものが

なんで同列やねんと

お思いかもしれませんが

自分の悪い癖で、LPを「聴く」というよりは「かける」方向で聴いている時が多くて、

そうなると、あとあとゆっくりアルバム通して聴いた時に

「エッ!?こんなええ曲入ってたっけ?!」

みたいなことになりがちなんですけれども、

このアルバムもそうでした。

 

このアルバム、1曲目の「Contemplation」(黙想・沈思の意味)は、

そのタイトルから反してフロア映えめちゃしますので私大好きなんですけれども、

周りからもいい加減突っ込まれ始めるくらい

かけまくっているんですけれども、

それ以外は基本MEDITATIONでした。

1曲目でアガってあとはストーンと落ちる感じですかね

 

 

 

 

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《Tracklist》

00:00 Contemplation  ←DANCE!

04:26 Watch The Trees  ←MEDITATION!

09:24 Circle ←INDIA!

11:24 Ivory And Steel ←MEDITATION!

15:33 Orphicon  ←MEDITATION!

20:07 State Of Sound ←MEDITATION!

 

という感じでしょうか。

 

Peter Michael Hamel

Betweenはどストレートなクラウトロックの枠にはまっているわけではなく、

クラウトロックの系譜をワールド方向に辿ると行き着くバンドです。

 

この最適な温度の湯船の中で、

最高に気持ち良いマッサージを受けているかのような音楽を作るバンドの首謀者は

ミュンヘン出身のPeter Michael Hamel(ピーター・ミヒャエル・ハメル)という、

ジャーマンロックシーンのミニマリストです。

 

彼は世界初の図形譜の発案者と言われているMorton Feldman(モートン・フェルドマン)や、

スティーブ・ライヒフィリップ・グラスらと並ぶアメリカの偉大なミニマル・ミュージック作曲家である

Terry Riely(テリー・ライリー)とも繋がりがあったようで

ロックバンドのミュージシャンというよりは、

アカデミックなクラシック寄りの現代音楽作曲家です。

なぜそのような繋がりがあったかと言いますと、

彼もまた、ホルガー・シューカイらと同様に、

ドイツ現代音楽の父カールハインツ・シュトックハウゼンに学んでいたんですね。

ジョン・ケージからも学んでいたという話も!?)

 

ちなみにピーターさん、こんな御本も執筆なさっております。

www.amazon.de


タイトルを英訳すると、「Using music to reach the self」

「音楽で自分を見つける」ということでしょうか。

 

彼はソロ作品も数多残しておりますが、ほとんどが

ミニマルアンビエントスピリチュアルニューエイジです。

90年代後半からはドイツ・ハンブルグでご自身も教授となり、

教鞭を執っていらしたとか。

 

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©︎PROGARCHIVES

 

優しそうなおじいちゃんですね。

 

 

なんでこんな優しそうで素晴らしい経歴をお持ちの方が

Betweenを結成したか?

 

 

そう、彼は若い頃ヒッピーだったんです

 

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©︎PROGARCHIVES

 

最高

 

Between

はい、ここにめっちゃいい話あります

バンド名「Between」の由来は、ピーターさんがいつも

ポピュラーミュージックと、シリアスミュージック(長い伝統により洗練され複雑な構成を持つ音楽)の間をいく音楽を目指していたからだそうです。

両方の音楽を知っていて、どちらの側の人にも、どちらの音楽も聴いて欲しかった、

という思想がおありだったのでしょうか。

もしそうだとしたら、それってめちゃめちゃ共感します。

人は飛ばしすぎるとついていけないですし、見下してしまうと耳に入らなくなります。

 

 

ピーターさんはヒッピー時代に

中東〜インドの音楽に触れ、

betweenの源流となる

大陸的な中世、呪術性のある古謡志向の強い、

土着的前衛音楽を取り入れて言ったわけですねぇ

 

でも自分はアカデミックな音楽畑の人だからバンドを組んでも

周りのミュージシャンもアカデミックなわけです

だからあんまり荒っぽい感じや、

ローファイなクオリティはbetweenから感じることはできません。

スマートな魔術性とでもいいましょうか。洗練されてる

それがbetweenをいっているということなのかも。(?)

 

 

実はこのアルバムにはPOPOL VUHに6年間在籍していた

クラシックオーボエ奏者Robert Eliscu(ロバート・エリスク)が参加していたりするので、

POPOL VUH系列で紹介されたりもします。

 

 

上述した本の執筆やソロ作品での

ミニマルアンビエントスピリチュアルニューエイジは、

Betweenの活動後の話になります。

彼は心理学も学んでいたので、

もしかしたらヒーリング・ミュージックを目指していたのかもしれません。

 

やっぱりヨーロッパからだと中東インドとかって距離的に近いから行きやすいのかしら。

でも不思議なのは、中東〜インドに南下していったクラウトロックミュージシャンは

たくさんいるのに、

アフリカに南下していったバンドってあんまいないんだよなぁ。

 

 

この音楽を聴くたびに、

本来自分がいるべき場所に戻ってきた感じがしますわ。

適温のぬるま湯、最高〜

 

 

 

【DANCE・FUSION・BRAZILL】Guru Guru Sunband /Taoma

昨日、元同僚の結婚式があったのですけれども、

この歳になってくると、結婚式も、だんだんと楽しくて参加できることだけでとても光栄なのですが、なんかギミックが欲しくなってきてしまうんですけれども、

元々とても仲の良い子だったということもあるかと思いますが

クラスの中でも大人しい部類に入る子が沢山努力して他の人には叶えられなかった夢を叶えて一生懸命仕事で駆け回っていたという、誰もが応援したくなるような小動物みたいな、愛される可愛らしい子なんですけれども、

その子の結婚式があまりにも良すぎて、泣き所が多すぎて

家族からと旦那さんや友人たちからの愛情が深すぎて、我々も彼女のことが大好きすぎて

本当にそれはもう、多幸感溢れる結婚式だったんです。

 

そのあまりにも幸せすぎた式の中、

脳内リフレインしまくっていたのはこの曲。

Guru Guru SunbandのTaoma。

 

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はいっ、再生してみてください。

 

どうですか?この押し寄せてくる多幸感

誰にも嫌悪感を抱かせない幸せな音楽

天国か楽園のどっちかですね

 

 

GURU GURU 

GURUGURU(グル・グル)とは

クラウトロック界隈において超有名ドラマーである、

Mani Neumeierマニ・ノイマイヤー)を中心に1968年に結成されたグループ。

当初はGURU GURU GROOVEと名乗っていたらしい・・(ちょっとダサカワイイ)

 

元々はロックの人じゃなくて、インプロビゼーション・ジャズの世界の人だったので

GURU GURUにバンド名義を変更して、

1970年にデビューアルバム「UFO」をリリースした時、マニはすでに三十路。

別のフィールドで実績を積んだ後にロックに介入してきたところや、30前後にしてデビューを飾るあたりはCANのメンバーやPopol Vuhのフローリアン・フリッケにも似てますな。

初期メンには元Agitation Free(アジテーションフリー)のギタリスト、

Ax Genrich(アックス・ゲンリッヒ)も参加したりしていました。

ちなみに、グルグルとはドイツのカエルの鳴き声らしい。

 

デビュー当初は社会主義で超ポリティカルなライブをやっていたらしく、

Taomaからはまるで程遠い超ハードロックな盤を残している彼ら。

フリー・ジャズ、もといフリー・ロック的な。

当時のクラウトロックの人たちって、Velvet Undergroundとか、ジミヘンとか

超意識&リスペクト&ディスってたみたい。

それでストレートなロックというよりはひん曲がったロックというか

世間を斜めから見ているような感じの、ちょっと様子がおかしいロックを作っていて

それが自分的にドツボなんですけれども、

マニはコミカルにひん曲がったロック感をアウトプットしていくんですね〜

4枚目にリリースしているセルフタイトル「GURU GURU」

というアルバムは、電気カエルの聴覚化を測った作品だったりするそう。そもそも電気カエルってなに?

 

 
GURU GURU SUN BAND

 

からの、デビュー10年を迎える目前、1979年に

GURU GURU SUN BAND名義でリリースされた唯一の作品が「Heydu」という、

青が印象的なこのアルバム。

マニの陽気で奇天烈な感性溢れまくりで作られたこのアルバムには、

アフロディスコっぽい合唱したくなる歌モノ「Star way」が収録されていたり、

バンドの初期を彷彿させるような呪術系ハードロックアンビエントな「Atommolch」が収録されていたりします。

ジャケットに描かれている、異常にテンションが高い変態ピエロからこれがどういったアルバムなのか窺えますね。

 

 

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このピエロって実写だと思うんですけど、どうなんやろか。

裏面これだし。

 

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手にガソリン給油するやつ持ってんな

 

 

そんな中でも、ブラジリアンフュージョンの傑作と名高い曲が

「Taoma」なんですけれども、

この曲だけに関していうと、本当にGURU GURUの陽の部分しか出てない。

ジャズ感はかなり強めですが、インプロ感はゼロ。

メロも楽器構成も、その美しさを形取るために、

完璧に構成されている。

曲の出だしが、レコードの曲を途中から再生したみたいな始まりになってて

DJでかけるときに失敗した?!と毎回思うのもこの曲の特徴。

わかってくれる人はわかってくれる!

 

 

マニ・ノイマイヤーは渡り鳥かのように

ちょっとだけ暖かくなる3月に毎年来日していて、

昨年"来日20周年"を迎えていました。

日本語でグルグル=回転という意味を知った時、かなり喜んだらしい。

Wikiで見たら、旧メンバーが37人!いましたね。

今もライブで観れるアーティストだけど、そう思って油断すると

突然何かが起きてしまうのが、70年代を全盛期に活躍したクラウトロックアーティストたち。

だから、見れるときに観たい。私は最後に見たのは2年前に高円寺UFOで。

おもむろに袋を取り出してアルミの皿ガシャガシャーンって床にぶち撒けて

叩き狂ってたなあ

奥様は日本人なのかもしれません。

 

 

落ち込んだときにはTaomaを聴いて多幸感をゲットしよう!

 

 

【SPACE・PSYCHE】Timothy Leary & Ash Ra Tempel/Seven Up

 

 

存命のクラウトロックアーティストの中で

私が一番見たいアーティスト生きる伝説 Manuel Göttschingマニュエル・ゲッチング)(65歳)の話をする回がやってまいりました。

 

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©️FACT magazine

 

 

見た目、なんぼほどカッコエエおじさんやねんと。

でも自分的にはこの清潔感とダンディーさを兼ね備えた渋めでオシャレな雰囲気を醸し出すゲッチングさんよりも、

 

 

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センター分けロングで、いかにもキマっている感じでニヤつきながらロックの域を超えて、ハウスやアンビエントにも影響を与えた歴史に残る大作を残していた70年代の彼の写真の方がしっくりきます。

 

 

Ash Ra Tempel Manuel Göttsching

彼は10代の頃からギタリストとして音楽活動を開始し、18歳の時にクラウトロックを代表するバンドの一つとも言えるAsh Ra Tempelを西ドイツで結成しました。

バンド名の由来はズバリ戦の神"阿修羅"です。

後にTempelを取ってAshraに改名しますし。

 

Ash Ra Tempelの初期メンバーにも先日のブログに書いた、

POPOL VUHのFlorian Frickeが彼のムーグを譲ったという

Klaus Schulzeが参加しています。(しかもドラムで!)

 

このバンドの最大の特徴はサイケ感とミニマル感とスペーシー感。

スペーシーの代名詞みたいな音楽をやってます。

クラウトロックでスペーシーというと割とシンセサイザー系の電子音楽をイメージしがちですが、マニュエルさんの場合はそれをギターでやっちゃうんです。

でも超繊細で超ミニマル。

その生っぽさ故に、後々ハウスやバレアリックの名盤と言われる「E2-E4」という作品を残すことにつながったのかなぁなんて勝手に思ってます。

 

 

Ashra - The Official Website

 

公式HPはこういう感じ。

ホルガーよりもずっとまとも・・

トップにはこんな記載もありました。マニュエル・ゲッチングの音楽が好きでピアノで演奏しちゃう女の子

ハードコアですね

 

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(from Ash Ra Tempel's Official web site.)

 

 

Timothy Leary & Ash Ra Tempel/Seven Up

 

そんなAsh Ra Tempelのミニマルサイケスペーシーミュージックに、脱獄経験ありの元ハーバード大教授、ヒッピーと精神世界のヒーロー、Timothy Leary(ティモシー・リアリー)という何故か嫌いになりきれない変態LSDグル(伝道師)が参加したアルバムを紹介します。

 

 

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Timothy Leary

これが彼のHP。

ひたすら生前のリアリーが"クリス"宛にサインを書いている動画がループされている。

 

集団精神療法で評価されハーバード大に招かれた後、LSDなどの幻覚剤を使い人間の人格変容の研究を行い続けたことで大学を追われることになるリアリー氏。そんな教授やばすぎだろ・・

 

しかし、60年代のカウンター・カルチャーのヒーローだったことも事実。

あまりにも反アメリカ社会的言動・行動が目立ち、目をつけられ大麻所持で投獄されてしまったリアリー氏。完全なレベルズ。

(投獄された時に受けた心理テストが自分で作ったものだった(リアリーはハーバード時代心理学者)から、脱走しなさそうな人柄に見られる回答をして、脱獄しやすい刑務所に入るよう仕向けたというエピソードも面白い)

 

 

投獄された後も、真剣に意識階層や

人間の脳の計り知れないポテンシャルを 研究し続けていたそうで、

この辺から徐々にSFっぽくなってくるんだけど、

投獄中に書いた著書『神経政治学』では宇宙移民の構想を練っていたらしい。

Wikipediaの言葉を借りると↓

 

宇宙移民(SPACE MIGRATION)、知性増大(INTELLIGENCE INCREASE)、寿命延長(LIFE EXTENSION)の頭文字をとってSMI2LEのコンセプトがあった。

SMI2LEが起こるので、自分の好みにデザインした惑星である H.O.M.E.s(High Orbital Mini Earths 高軌道のミニ地球)に移住することを構想した。

また、1973年の7月から8月にかけて、銀河系内の高次生命体に接触するため4人チームでテレパシーを行い、19つの断片としてスターシードのメッセージを受信した。

 

 

 

 

 

晩年にはLSDから離れて上述した宇宙移民研究であったりとかコンピューターテクノロジーに生命体や、物理的に生きることの可能性を見出していたよう。サイバーバイオロジーとでもいうのでしょうか・・

 自分の癌が発見された時も、「死」をプロセスと捉えて自分が死ぬまでをデザインして、死後頭部を切断&冷凍保存して宇宙葬したらしい。

 

 

SF好きなので話が逸れてしまった・・・

 

 

宇宙研究とかの話まで行っちゃったので時系列的にはLSDグル・ティモシーリアリーに戻るんですけど、

このアルバムは、そんなぶっ飛んだ思想をお持ちのティモシー・リアリーを支援するために、ちょうど彼がスイス亡命中でご近所にいたのでレコーディングにお招きし、炭酸飲料Seven UpにLSDを詰めてレコーディング参加者全員がそれを飲みながら録音されたっていうのは有名な話なんですけれども、

そんな全員キマリきった環境の中で作ったアルバムなのにクオリィテめっちゃ高いんですね。

 

のっけから割とブルース感が強いロックの展開になっているのはゲッチングさんがAsh ra tempel結成前にブルースバンドを組んでいたからだと思われます。

 

クラウトロックには留まらない、サイケ名盤中の名盤だと思います。

超絶トリップミュージックの中にある卓越ミニマルギターが産むノイジーな音のさざ波、宗教とかそう行った方向の精神世界ではなくロックとノイズとインプロビゼーションで酩酊していく方向。

ちょっと不健康な初期ピンクフロイドって感じでしょうか?

 

あと、ジャケ。

一回見たら忘れないジャケ。

よく見ると人間の顔たくさん書いてあるし、アヒルとかいる、有機的

 

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自分はこういうの好きで、素面でもその素晴らしさは十分伝わりますが、

正直にいうと、聴く人は選ぶ盤だと思いますし、全く意味がわからないって感想が出てきたとしても全く不思議ではないです。

これ聴いて体調悪くなる人がいないかも心配ではあります

 

あと残念なのは、リアリー氏の歌詞がところどころしか聞き取れないこと

 

注釈ですが、リアリー氏を嫌いになりきれないのは、ドラッグを肯定しているわけではなく、精神世界の研究やその活動や成果が面白いからです

 

 

オリジナルLPは東京のHMVで2万円くらいでした。

高い

【WORLD・NEW AGE】POPOL VUH/Agape Agape

 

マーキームーン社刊から出ている「クラウトロック集成」という本が置いてあるレコード屋さんでまだ自分がこのジャンルに傾倒する前店長に、

「POPOL VUHなんて言葉、日常生活で全く使わないし、今読んどかないと今後二度とPOPOL VUHについて調べることもないだろうから、そのページ、読んどいたほうがいいよ!」

と言われてから、どっぷりハマってしまった。

好きな人に会うときみたいにドキドキする高揚感をいつ聴いても感じられるのはこのバンドかもしれないです。

 

 

 

Florian Frickeとは

ポポル・ヴーという不思議な響きのバンドは、

1970年に音楽家Florian Fricke(フローリアン・フリッケ)を中心に、Holger Truelzsch(ホルガー・トリュルシュ)と、 Frank Fiedler(フランク・フィードラー)で結成された、ドイツ南部はミュンヘンクラウトロックバンドです。

 

バンドは3人で始まったものの、このバンドにおいての音楽とは、リーダーであるFlorian Frickeの音楽です。

 

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©️BELLRECORDS

 

個人的にフローリアン・フリッケにおいて特筆すべきは2点。

ある種、クラウトロックの特徴とも言えるモーグシンセサイザーを誰よりも早く取り入れたこと、それからドイツ映画監督Werber Herzog(ヴェルナー・ヘルツォーク)と親友であったことです。

 

モーグとフリッケ

下の写真はモーグシンセイサイザーとフローリアン・フリッケです。

めちゃめちゃカッコイイですよねぇぇ、

当時モーグなんて200万以上する代物だったはず、

それを若干27歳の若さで買ってPopol Vuhのファーストアルバムを作ったんですから、その財力にも脱帽です。

フリッケは富裕階級出身だったということもあると思いますが。。

 

しかも、彼、その超高価なモーグシンセサイザーで3枚アルバムを作った後に、すぐ人に譲っちゃうんです(この間、約2年)(あげたとも言われているし、売ったとも言われている)

しかも、その譲渡相手はTangerine Dreamのオリジナルメンバーで、モーグシンセイサイザーの巨匠と言っても過言ではなく、未だに若き音楽家たちにも影響を与え続けるKlaus Schulze(クラウス・シュルツ)なんですねぇぇ

 

めちゃめちゃロマンある、この流れ

 

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©️bettina von waldthausen

 

ヘルツォーグとフリッケ

ドイツ映画監督のヴェルナー・ヘルツォーグと、フリッケは10代の頃からの友人で、

Popol Vuhというバンド名の由来は、2人がミュンヘン大学の図書館で見つけたマヤ文明教典「死者の書」からきているそうです。

一緒に読んだ本の名前を生涯のバンド名にしちゃうなんてほんと仲良し

 

ヘルツォーグは、

ヴィム・ヴェンダースライナー・ヴェルナー・ファスビンダーらと並ぶ、ドイツのヌーヴェルバーグ、ニュー・ジャーマン・シネマの代表的な監督だそうです。

自分の撮りたいものを撮るためにまさに命がけでアマゾンの奥地に入っていき、撮影スタッフの怪我、仲間割れ、殺す殺さないの脅しなどを経て撮影を敢行、様々な狂気的なエピソードを残している監督とのこと。

(実際に映画も割と常軌を逸している系の禍々しいストーリーのものが多いらしい)

 

更にヘルツォーグは、音楽からの影響を大きく受けて映画を作っていたという特異的な監督だそうです。

そんな彼の頭の中に流れる神秘的で狂気じみた音楽を再現できるのは、フリッケだけだったのかもしれません。

 

自分的に、この手の音楽が映画やドラマのサントラに使われるなんて発想がまずなかったので、初めて知った時には非常に驚いたことが記憶にありますが、

(CANやTangerine Dreamもよく使われています。)

フリッケのように音楽以外のクリエイターとがっつり絡んで作品を残していったクラウトロックアーティストは珍しいんじゃないかな〜っと思ったりしていて、親友でありながら、仕事も共にする最高のパートナーがいるなんて、その関係性が羨ましくもあったりします。

 

Agape Agape

バンドの説明が長くなりましたが、今日紹介する盤の話をします。

(捨て曲がないのでアルバムで紹介します。)

 

散々、モーグの話を前談でしたから電子音楽のアルバム紹介かと思いきや全然違います。

 

1983年に発売された「Agape Agape」というタイトルのアルバム。

69年から活動しているPopol Vuhにとっては中期の作品になりますが、マジで素晴らしい。ぐうの音も出ない。とりあえず、今すぐ、Youtubeの再生ボタンを押して曲の世界に浸っていただきたい。

 

 

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1. Hand In Hand

2. They Danced, They Laughed, As Of Old

3. Love, Life, Death

4. The Christ Is Near

5. Love - Love

6. Behold, The Drover Summonds

7. Agape - Agape ←DJで1曲目にかけたい。

8. Why Do I Still Sleep

 

名盤というのは曲のタイトルさえも素敵ですね。

「Why Do I Still Sleep/私はなぜ眠ったままなのか」なんてタイトル最高すぎませんか

一体誰の視点なんやと。この曲を聴いて心が安らがない人なんているのでしょうか。

 

 

Popol Vuhのバンドサウンドの最大の特徴は、宗教観。

フリッケが電子音楽をやめてアコースティックに回帰し、旧約聖書を題材にして作品を作り始めてから、色濃くその特徴が出ております。

誰よりも早くシンセを取り入れた男は、電子音楽を早々に手放し

ある人にとっての信じる道であり、ある人にとっての救いであり、時に争いを勃発させる宗教を、自分のサウンドに取り入れることに着手して行ったんですね

 

そんなキャリアの中での中期の作品なんですが、ある種もう極みに来ている感じがあって大変なことになっているんですよ、

バンドキャリアの中期にしてもうほぼ集大成な感じな訳ですよ、宗教崇拝ミュージックというジャンル(?)において。

いや、作り始めの作品も、Popol Vuhで一番の名盤!と言われているほど素晴らしいんですけれども。

 

 

グレゴリオ聖歌のようなコーラス、辺境系パーカッション、祭事や儀式に欠かせない銅鑼や11年ぶりに参加したConny Veitの12弦ギターの存在感・・

宗教を感じるような音楽ってダブっぽさが強いものが多いと個人的に感じていたのですが、このアルバムはダブっぽさがまるでない、そうなると、ここまでスピった感じになるかと・・・

 

原始的・土俗的であり呪術的、だからこその古代宗教感故の神秘的さ、非常に心地が良く郷愁感強め。

瞑想にもうってつけ。

私はこのアルバムはニューエイジだと思っています。

 

ちなみにこのアルバムは去年再発が出てます。One way static recordsというレーベルですが、ホラー映画やカルト映画のサントラを

主にリイシューで出しているレーベルからです。

 

Love

フリッケは、2001年に脳卒中で他界しています。享年57歳。若いですね。

彼のインタビューに

”Popol Vuh is a Mass for the heart.  It is Music for Love.  Das ist alles (that is all)...”

という言葉があります。

 

愛のための音楽、なんだか彼自身がキリストだったんじゃないかと思ってしまいますね。結局、どの 宗教の先にあるのは愛なんですね。

 

 ちなみに「Agape」とはギリシャ語で「Love」の意味です。

どちらかというと無償の愛。

 

 

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大好きすぎて全然うまくまとめられませんでした。

ここに出てくる登場人物や書ききれていないレコードの紹介についてはまた後日。

 

【DANCE】Holger Czukay/Sdetenland

Holger Czukay/Sdetenland

 

ブログを始めようと思ったキッカケとなった曲を1番最初に紹介しようと決めていたので脈略もなくこの曲について紹介します。

 

 

Holger Czukayの公式HPについて

Holger CzukayはCANというドイツプログレ史の枠を超えて世界中のロックバンド〜ヒップホップアーティストにまで影響を与えた重要なバンドの創設メンバーであり、ベーシストです。

 

 

あまり知られていないと思いますが、これはホルガー・シューカイの公式HPと思われるものです。

誰が作ったのか、運営していたのか謎なんですが、とにかく仕掛けが多すぎて更新されていないのに毎回見ても飽きないんで是非訪れて見てください。

 

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自分的にはこういったホルガーのお茶目な姿にはめっちゃアガります。

 ちょっとアインシュタインに既視感を感じます

 

こういうホルガーが使ったっぽいサンプリング音源がDLできたり、

(他にも音楽・動画DLできるっぽいけどほぼramファイル)

http://www.czukay.de/collabs/projects/audio/africana/africana.mp3

 

彼の徒然ダイアリーや、小噺、ポエム、師であるシュトックハウゼンについての記事もアップされていたりします。貴重ですね

あとweb camってのがあるんですけど何か撮られているのかな?

 

www.czukay.de

 

 

 

 

Sdetenland

彼は数々の有名曲を残していますが、

今日紹介する「Sdetenland」という曲はあまり知られていないのではないでしょうか。

ブルガリア歌唱をサンプリングしている曲ですが、曲のタイトルはドイツ語で「スェーデン地方」という意味。ブルガリアなのに…

 

 

12:49〜Sdetenland オリジナルver.

 

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ワールドミュージックにたくさんの影響を受けていた彼の曲の中でも自分的にはこのパーカッションの独特のリズムや、ダブっぽいベースライン、(P.I.L.Jah Wobbleがベースで参加しています。)

ブルガリアンボイスの入ってくるタイミング、重ね方歪ませ方など超ツボです。

これならDJでかけてもフロアで踊れると思うのは私だけでしょうか。

 

 

サンプリングネタはこちらの曲だと思われます。(と、他の曲も混ざっているっぽい)

 

youtu.be

 

 

vimeoにはこれの原型ともなりそうな曲が落ちています。

この映像もComputer animationですが、ローファイvapor waveみたいになっています。首飛びすぎ

 

vimeo.com

 

 

さらになんとこの曲はRemixが出ています。

一番最初に作られたのは2014年にGroenland Recordsのリイシューセット用だったようですが

昨年バレアリック伝道師Paul MurphyのClaremont 56からもリリースされています。(やっぱフロア向け)

 

ただ正直に言って、マジでオリジナルとの違いがわからない。

Holger が40年近くに渡って思い溜めていた気に入らなかった部分をほんのちょっと修正しました、的な感じに自分には聞こえますが、どうでしょうか。

 

claremont56.bandcamp.com

 

 

余談ですが、Claremont56 10周年記念アルバムから出ているアルバムに収録されている

Bison(ホルガーと奥さんのユニット)の曲も最高です。

 

 

soundcloud.com

 

 

Remixの人選よ!

 

soundcloud.com

 

 

正直これを書くまで、Baldelliまで同じ記事に名前が出てくるとは思っていませんでした。

勉強なるわ

プログレという枠に収まりきらないクラウトロック・・素晴らしい

開設にあたり

 

ブログ開設にあたり

音楽にいつも好奇心をくすぐられている自分ですがこのクラウトロック/ジャーマンプログレというジャンルには割と強い想い入れがございます。

 

 

昨年、クラウトロックで最も有名バンドであろうCANのオリジナルメンバー、Holger CzukayとJaki Liebezeit(本名Hans Liebezeit)が亡くなってしまいました。

それ以前にも私が大好きなEdger Froese(Tangerine Dream)や、Dieter Moebius(Cluster)など、クラウトロックの偉大な先人が続けて亡くなっていたのですが、やはりHolgerとJakiの死はとても大きかったです。

 

 

しかし、近年、日本の中堅〜若いインディーズバンドの人達がジャーマンプログレを聴いていたり、それに影響を受けた音楽をやっていることを感じたりしています。

先人たちの音楽を受け継いでいく彼らを見て、自分もこのジャンルに貢献(おこがましい)できないかという思いと

単純に、若者たちとクラウトロックの話をしたいな〜っという自己中心的な思いでブログを開設した次第でございます。

 

 

もちろん、ブログなんか開設せずとも素晴らしい文献はたくさん出ております。

 

自分が紹介する意味としては、おじさんの音楽(すみません、、)というイメージの「プログレ」をポップかつお手軽に紹介していきたいなぁ〜っ、と思っています。

 

 

どうぞ、ご贔屓に。。