Holger Czukay Retrospecitve Box Set "Cinema"
昨年の9月に多くの音楽ファンに惜しまれながら亡くなった、クラウトロック界最重要バンドCANの、中心人物であるベーシストHolger Czukay(ホルガー・シューカイ)。
アバンギャルドとポップの橋渡しと評され、今年の3/24には80歳の誕生日を迎える予定でした。
ホルガーのお誕生を記念して、
歌手であり俳優でもあるHerbert Grönemeyer(ヘルベルト・グレーネマイヤー)が運営するドイツのレーベルGroneland Record(https://www.groenland.com/en/)から、
Cinemaという5枚組のボックスセットが発売されることが年明けに発表されていました。
本来であれば、ホルガーへのお誕生日プレゼントとなったであろうこのボックスセットは奇しくも彼の"Retrospectiveなボックスセット"と、プレスリリースされることになってしまいました。
これについての詳細はコチラ↓
シュトックハウゼンや、イーノとのコラボ曲や未発表曲はもちろん気になるんだけど、
それよりもっと気になるのは、ホルガーが初めて制作したビデオレコーディングだという「Vinyl Video」なるもの。なんだそれ、初めて聞いた。それについての説明は下記。
さらに、LPボックスには映像データをアナログ信号で記録した7”ヴァイナルビデオ盤も同梱。(ただし、プレイヤーとご家庭のテレビを接続して映像を再生する特殊な機器が必要となります。機器の詳細については現在のところまだ公表されていません。)
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CAN
CANと私との出会いはなんだったでしょうか。
エンボス加工が美しい5枚目のアルバム「Future Days」のジャケットが目についたのか、
脳みそが見えている人間の口から脳みそが出ているジャケットの3枚目のアルバム「Tago Mago」との出会いでしたでしょうか。
CANの始まりは1968年に、
Holger Czukay(ホルガー・シューカイ)
Irmin Schmidt(イルミン・シュミット)
Jaki Libezeit(ヤキ・リーベツァイト)
Michael Karoli(ミヒャエル・カローリ)
David Jonson(デヴィッド・ジョンソン)
の5人でケルンでコンサートを行ったところからだそうです。
最初はInner spaceというバンド名だったそう。
そのあと、CANが解散するまでマネージャーを勤めたイルミンの奥さんの意見によって、突然Malcolm Mooney(マルコム・ムーニー)という黒人ボーカルが加入します。
フルートのデヴィッド・ジョンソンは音楽性の違いからすぐにCANを脱退し、残った5人で69年にロック史に名を刻む超重要モンスターアルバム、その名も「Monster Movie」を作り上げます。
しかし、そのアルバム制作後、マルコムはアメリカに1人帰国してしまいます。
その後、CANにボーカルとして加入し世界で名を轟かし未だに新規の若いファンがついている超有名日本人国際派ヒッピーのダモ鈴木。
CANは当時メンバー内で交互に仮眠と食事ををとりながら24時間以上ライブするというスタイルだったらしいのですが(意味わからん)、ミュンヘンでライブをしていた際に休憩中次のボーカルをどうするかと相談しながらウロウロしていたホルガーとヤキが路上パフォーマンスで奇声を発していたダモ鈴木をたまたま見つけ、捕まえてライブハウスに引っ張っていき、そのままステージに上げて、その日にCANへの加入が決まった、というのは有名な話。
その後大ブレイクを果たし、映画やドラマのサントラに使われたり、ヒップホップにサンプリングされたりとジャンルのクロスオーバーもたげだけしいそんなCANなんですけれども、
名曲ありすぎますので王道紹介してもしょうがないかなぁと(今後するけど)、
ボックスセット5枚組全34曲にも収録されていないこの曲を紹介します。
Soon Over Babaluma/Dizzy Dizzy
私がBest Jacket of Krautrockと称えてやまないこの青と銀のジャケット。
Soon Over Babaluma
美しすぎる装丁。
一番上が近いんですかね、銀が伝わりづらいのが哀しい。
A1 Dizzy Dizzy
A2 Come Sta, La Luna
A3 Splash
B1 Chain Reaction
B2 Quantum Physics
なんか、このyoutubeスクリューされてておかしいな。
曲単位でyoutubeに上がっていますのでそちらをどうぞ。
このアルバムはCANの7枚目のアルバムになります。
6枚目でダモ鈴木(鈴木健二)がエホバの証人に入信してその強すぎる信仰心から色々起きてしまいバンドを脱退してしまったので、慌ててマルコム・ムーニーを呼び戻そうとアメリカからドイツ行きの航空券まで手配したのに振られ、仕方なくメンバーの中では最年少であり、唯一ストレートなロックのルーツをもつミヒャエル・カローリがボーカルを務めます。
しかし、それが功を奏しまくる。
※2曲目だけイルミン・シュミットがVo,を務めるがこれまた見た目通りの変態ボーカルなので是非聴いてほしい
「Dizzy Dizzy」はレゲエ、「Come Sta, La Luna」はタンゴ、「Splash」はラテンジャズの要素が取り入れられた曲で、「Chain Reaction」ではアフリカやキューバの音楽に影響を受けたパーカッションがフィーチャーされていて、全体的に超ダブだし、超エスノ。
Dizzy DizzyとSplashだけシングルカットされてますが、今日ピックアップしたいのはDizzy Dizzy。直訳すると「目眩、目眩」
完全に怪しすぎる不穏なイントロ。
この0:38あたりから始まる私が愛してやまない不安定なメロディはヴァイオリンによって演奏されている。
お揃いの白いヘッドフォンが可愛い。
ホルガーの白いベースに白い手袋に合わせてるのだろうか。
若きミヒャエル君がヴァイオリン弾きながら歌っている。
冒頭の歌詞が「I don't smoke with an Angel」と聴こえる。
こういうペルシャ絨毯の上で演奏するスタイル最高にオシャレだと思う。
ちなみに、このDizzy Dizzyに置いて絶対見た方が良いライブ映像が下記。
1977年のライブの様子。
このライブアレンジめちゃくちゃカッコいいんですけど、特筆すべき点が何点かあります。
まずライブメンバーがいつもと違う。
ベーシストであるHolger Czukayがベースを弾いてませんね。
この動画でブリブリのベースを弾いている超イケてる黒人おじさんは、Rosko Gee(ロスコ・ジー)というジャマイカンベーシストです。彼はSteven Winwood(スティーヴン・ウィンウッド)が在籍していたことで有名なイギリスのバンドTraffic(トラフィック)でのサポートや、60年代〜70年代に活躍した京都出身日本人ながら世界のプログレに大貢献したStomu Yamashtaの作品へ参加したりしている人です。
(Stomu Yamashtaも何度もこのブログに出てくるクラウス・シュルツとバンドをやったりと相当ヤバ目な人なので、寄り道する余裕のある人は是非↓)
そらもうジャマイカ出身だし本場だしブリブリなわけです
このfunkiest Live everなアレンジに関して一番貢献しているのはRosko Geeのベースかな。服装もマジカッコイイ
それから、サムネになってるスピーカー群。
なんでこんな配置にしているのか、なんかレゲエでよくあるサウンドシステムっぽくないですか。
Sound System beim Notting Hill Carnival in London (c) Brian David Stevens
まぁこれがサウンドシステム意識してるのかはわからないけど、サウンドシステムってレゲエでは非常に重要なもので、各サウンドクルーによって音響設備が全然違ってそのクルーの出す音をマックスにカッコよく聞かせる、とにかくこれがあれば更に強くなるみたいな増強剤的なものだと思ってるんですけど、
なぜそのサウンドシステムの前にマイクを置く?
そのマイクで拾った音はどこから出してるん?
謎すぎるし発想がトビすぎてる。意図が知りたい。どなたか詳しい方教えてください・・
それから、3:20〜ホルガーが流すサンプリング曲の元ネタ。なんだっけーこれ、
あ〜脳みそがかゆい〜
思い出したら追記します。
ちなみにその右横に電話があったことには皆さまお気づきだろうか?
アートミュージックとかで見たりしますが、ホルガーはあの電話何に使ったんやろか。
更に特筆すべきはこんなゴリゴリの状況下に置いて微動だにしないオーディエンス達。
あとボタン外しすぎなギターのミヒャエル君。
あとシンセ弾いてるイルミン・シュミットが着ているMA-1から放たれている、強いコスモ。
一応、MVもある。映像素材多いな。
この曲マジかっこいいんだよなぁ。