クラウトロックとそれにまつわる音楽のブログ

クラウトロック/ジャーマンプログレの紹介がメインです。

【SPACE・PSYCHE】Timothy Leary & Ash Ra Tempel/Seven Up

 

 

存命のクラウトロックアーティストの中で

私が一番見たいアーティスト生きる伝説 Manuel Göttschingマニュエル・ゲッチング)(65歳)の話をする回がやってまいりました。

 

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©️FACT magazine

 

 

見た目、なんぼほどカッコエエおじさんやねんと。

でも自分的にはこの清潔感とダンディーさを兼ね備えた渋めでオシャレな雰囲気を醸し出すゲッチングさんよりも、

 

 

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センター分けロングで、いかにもキマっている感じでニヤつきながらロックの域を超えて、ハウスやアンビエントにも影響を与えた歴史に残る大作を残していた70年代の彼の写真の方がしっくりきます。

 

 

Ash Ra Tempel Manuel Göttsching

彼は10代の頃からギタリストとして音楽活動を開始し、18歳の時にクラウトロックを代表するバンドの一つとも言えるAsh Ra Tempelを西ドイツで結成しました。

バンド名の由来はズバリ戦の神"阿修羅"です。

後にTempelを取ってAshraに改名しますし。

 

Ash Ra Tempelの初期メンバーにも先日のブログに書いた、

POPOL VUHのFlorian Frickeが彼のムーグを譲ったという

Klaus Schulzeが参加しています。(しかもドラムで!)

 

このバンドの最大の特徴はサイケ感とミニマル感とスペーシー感。

スペーシーの代名詞みたいな音楽をやってます。

クラウトロックでスペーシーというと割とシンセサイザー系の電子音楽をイメージしがちですが、マニュエルさんの場合はそれをギターでやっちゃうんです。

でも超繊細で超ミニマル。

その生っぽさ故に、後々ハウスやバレアリックの名盤と言われる「E2-E4」という作品を残すことにつながったのかなぁなんて勝手に思ってます。

 

 

Ashra - The Official Website

 

公式HPはこういう感じ。

ホルガーよりもずっとまとも・・

トップにはこんな記載もありました。マニュエル・ゲッチングの音楽が好きでピアノで演奏しちゃう女の子

ハードコアですね

 

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(from Ash Ra Tempel's Official web site.)

 

 

Timothy Leary & Ash Ra Tempel/Seven Up

 

そんなAsh Ra Tempelのミニマルサイケスペーシーミュージックに、脱獄経験ありの元ハーバード大教授、ヒッピーと精神世界のヒーロー、Timothy Leary(ティモシー・リアリー)という何故か嫌いになりきれない変態LSDグル(伝道師)が参加したアルバムを紹介します。

 

 

youtu.be

 

 

Timothy Leary

これが彼のHP。

ひたすら生前のリアリーが"クリス"宛にサインを書いている動画がループされている。

 

集団精神療法で評価されハーバード大に招かれた後、LSDなどの幻覚剤を使い人間の人格変容の研究を行い続けたことで大学を追われることになるリアリー氏。そんな教授やばすぎだろ・・

 

しかし、60年代のカウンター・カルチャーのヒーローだったことも事実。

あまりにも反アメリカ社会的言動・行動が目立ち、目をつけられ大麻所持で投獄されてしまったリアリー氏。完全なレベルズ。

(投獄された時に受けた心理テストが自分で作ったものだった(リアリーはハーバード時代心理学者)から、脱走しなさそうな人柄に見られる回答をして、脱獄しやすい刑務所に入るよう仕向けたというエピソードも面白い)

 

 

投獄された後も、真剣に意識階層や

人間の脳の計り知れないポテンシャルを 研究し続けていたそうで、

この辺から徐々にSFっぽくなってくるんだけど、

投獄中に書いた著書『神経政治学』では宇宙移民の構想を練っていたらしい。

Wikipediaの言葉を借りると↓

 

宇宙移民(SPACE MIGRATION)、知性増大(INTELLIGENCE INCREASE)、寿命延長(LIFE EXTENSION)の頭文字をとってSMI2LEのコンセプトがあった。

SMI2LEが起こるので、自分の好みにデザインした惑星である H.O.M.E.s(High Orbital Mini Earths 高軌道のミニ地球)に移住することを構想した。

また、1973年の7月から8月にかけて、銀河系内の高次生命体に接触するため4人チームでテレパシーを行い、19つの断片としてスターシードのメッセージを受信した。

 

 

 

 

 

晩年にはLSDから離れて上述した宇宙移民研究であったりとかコンピューターテクノロジーに生命体や、物理的に生きることの可能性を見出していたよう。サイバーバイオロジーとでもいうのでしょうか・・

 自分の癌が発見された時も、「死」をプロセスと捉えて自分が死ぬまでをデザインして、死後頭部を切断&冷凍保存して宇宙葬したらしい。

 

 

SF好きなので話が逸れてしまった・・・

 

 

宇宙研究とかの話まで行っちゃったので時系列的にはLSDグル・ティモシーリアリーに戻るんですけど、

このアルバムは、そんなぶっ飛んだ思想をお持ちのティモシー・リアリーを支援するために、ちょうど彼がスイス亡命中でご近所にいたのでレコーディングにお招きし、炭酸飲料Seven UpにLSDを詰めてレコーディング参加者全員がそれを飲みながら録音されたっていうのは有名な話なんですけれども、

そんな全員キマリきった環境の中で作ったアルバムなのにクオリィテめっちゃ高いんですね。

 

のっけから割とブルース感が強いロックの展開になっているのはゲッチングさんがAsh ra tempel結成前にブルースバンドを組んでいたからだと思われます。

 

クラウトロックには留まらない、サイケ名盤中の名盤だと思います。

超絶トリップミュージックの中にある卓越ミニマルギターが産むノイジーな音のさざ波、宗教とかそう行った方向の精神世界ではなくロックとノイズとインプロビゼーションで酩酊していく方向。

ちょっと不健康な初期ピンクフロイドって感じでしょうか?

 

あと、ジャケ。

一回見たら忘れないジャケ。

よく見ると人間の顔たくさん書いてあるし、アヒルとかいる、有機的

 

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自分はこういうの好きで、素面でもその素晴らしさは十分伝わりますが、

正直にいうと、聴く人は選ぶ盤だと思いますし、全く意味がわからないって感想が出てきたとしても全く不思議ではないです。

これ聴いて体調悪くなる人がいないかも心配ではあります

 

あと残念なのは、リアリー氏の歌詞がところどころしか聞き取れないこと

 

注釈ですが、リアリー氏を嫌いになりきれないのは、ドラッグを肯定しているわけではなく、精神世界の研究やその活動や成果が面白いからです

 

 

オリジナルLPは東京のHMVで2万円くらいでした。

高い